1946年に創業した佐世保船舶工業㈱(現佐世保重工業㈱)の海上部門としてスタートし、150トン型曳船、300トン型曳船や起重機船など佐世保海軍工廠の設備を引き継ぎ、旧海軍艦艇の解体事業を経て新造船・修繕船事業が本格化し、それらの海上作業を担う中で、大型化する商船の進水、入出渠、離接岸作業等の安全と曳船性能の向上のため、徐々に更新がなされました。特に曳船は、それまでの石炭炊きボイラーと1軸当たり400馬力程度の蒸気レシプロ機関から1,000馬力を超えるディーゼル機関に替わって、曵力が格段に向上すると共に、煤煙の低減と暖冷機時間の短縮を実現しました。
写真:旧海軍300トン型*曳船「賞観丸」。昭和14年8月、旅順にて進水。 石炭炊きボイラー及び蒸気レシプロ機関各2機、750馬力 *排水量300トン(総トン数189トン)。
佐世保重工業㈱の新造船大型化と修繕船工事量の増加、曳船と小型作業船を増強。ディーゼル主機関に置き換わる中で、新造船「愛宕丸」に於いて初めてコルトノズル付きZドライブ式推進装置を採用し、過給機付き中速ディーゼル主機関と相まって飛躍的に性能が向上しました。
写真:「立神丸」強力なディーゼル主機関を有する捕鯨船(キャッチャーボート)を、昭和46年頃に改造して仕立て直した曵船。昭和22年9月進水、建造時は旧海軍22号10型ディーゼル機関1機を搭載。(換装の可能性有り、調査中)
「愛宕丸」に続き「﨑辺丸」、「立神丸」のZドライブ式曳船と、翼車式と呼ばれる特殊な推進装置を搭載した「将冠丸」が加わり、旧来の蒸気レシプロ式曳船が全て引退。当社曳船団の新たな時代が到来しました。 また佐世保重工業㈱鉄構部が製作する大型橋梁や海洋構造物の据付工事に於いて、長崎県内をはじめとする近隣地域で活躍しました。
左写真:「愛宕丸」1978年、第3種消防設備を搭載後、放水テストの様子。オイルショックの影響下、同年秋から始まった橘湾タンカー石油備蓄事業に、防災船として参加しました。
電子技術の発展が曳船にも波及し、マイコンやCPUを用いたデジタル制御が取り入れられます。 「葉港丸」や「九十九丸」ではZドライブの操舵やCPPの変節など、Zドライブ式推進装置の制御がデジタル化されました。またディーゼル主機関も新世代となり、強力な出力を得ました。
左写真:「将冠丸」。和船の艪を基に考案されたとされる翼車型推進装置を搭載し、自由度の高い操船性能を発揮。1966年7月進水。
2008年、「九十九丸」以来20数年振りとなる新造曳船「弓張丸」と「赤崎丸」が竣工しました。 当時最新の排出ガス規制に適合した4,000馬力の強力な主機関と最新機器を取り入れ、多方面に活躍します。 また2014年以降小型船も随時更新し、こちらも排出ガス規制に適合したディーゼル主機関を搭載するなど、 環境に配慮しつつ性能の向上が実現しました。